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鬱病の治療中ですがどんなことに気をつけたら良いでしょうか?

鬱病治療中の患者さんに絶対守ってほしい10ヶ条

 鬱病を治すには医師の指示通りに抗鬱薬や睡眠薬などを服用しながら、ゆっくりと休養を取る事が何よりも大切です。鬱病の患者さんは元来、生真面目で責任感が強いため、仕事を休むことを嫌がる人が多いのですが、活力が落ちている時に無理に仕事をしても能率は上がらずミスも多くなります。その結果かえって追いつめられて、病気を長引かせる事になりかねません。思い切って仕事から離れて心身の疲れを取るのに専念するのが一番です。抗鬱薬を服用しながら休養を取っていると、ぐっすり眠れるようになり、心の焦りや不安が取れ、食欲も増してきます。気分もさわやかになり今まで関心の薄くなっていた新聞やテレビなどにも興味が持てるようになってくるはずです。ただし、鬱病の症状は治療中に一進一退を繰り返すのが普通です。鬱症状の「揺り戻し」はしばしば見られる事なので、焦らずゆとりを持って治療に専念して下さい。

1.必ず治ると信じる
 鬱は治らない「心の病」という誤解があるようですが、適切な治療を受ければ必ず治ります。今は暗いトンネルの中に入り込んだような気持ちでしょうが、必ず抜け出す事が出来るので、あせらずじっくり治療を続ける様にしましょう。

2.自分で治そうとしない
 あせって素人判断で勝手な治療を行ったり、いかがわしい民間療法を試したりはしないようにします。また、病状や治療法などについて専門家ではない知人、友人らに相談するのも避けた方が良いでしょう。「気の持ちようで治る」とか「薬は副作用が怖いから止めた方が良い」などというように医学的に誤ったアドバイスをされてかえって治療の妨げになる事があります。

3.何でも自分でやろうとしない
 仕事や家事、日常生活の雑用などはどうしても自分でやらなければならない最低限のことだけやって、あとはなるべく他の人に任せる事が大事です。鬱病の患者さんには完璧主義で仕事を他人に任せられない性格の人が多いのですが、今はゆっくりと休むことをまず心がけて下さい

4.人生上の重大な事は決めない
 退職や転職、入学、引っ越し、結婚や離婚など重要な問題についての決定はすべて延期します。鬱状態の時には、自分の考えや行動に対して自信を失っており、何でもマイナス思考になりがちです。物事に対してつい投げやりな態度で接してしまうので、間違った判断をしやすく、後で後悔する事が多いのです。人生にとって大事な問題の決定は病気が治ってから行う事が大切です

5.鬱病になったことを悲観しない
 鬱病は「心の風邪ひき」とも云われるほど誰でもかかる可能性のある「ありふれた病気」なので、必要以上に心配しないようにします。

6.家族や仲間と良く相談する
 鬱病を治すには、いち早く適切な治療を受け続けられる環境を作る事が大切です。そのためには、まず職場の仲間や上司とよく相談して、通院の便宜をはかってもらったり、仕事を臨時に肩代わりしてもらったりする必要が出てきます。職場を休んで治療に専念する場合には、堂々と休暇が取れる様に配慮してもらう必要もあるでしょう。心身の安静と休養を確保するためには、職場だけでなく、家族の協力も不可欠です。落ち着いて治療を続けられる環境を作るために、家族の方と良く相談する様にして下さい。

7.抗鬱薬は安心して服用する
 抗鬱剤を長期間飲み続けることに不安を感じる患者さんも少なくないようですが、どうか安心して服用して下さい。副作用として、飲みはじめの吐き気、口の乾き、便秘、めまい、眠気などがあらわれることもありますが、どれも深刻なものではなく心配はいりません。鬱病が治って薬をやめれば副作用も消えて行きます。どうしても我慢できない場合は医師に相談する様にして下さい。

8.気分が良くなっても勝手に薬を中止しない
 通常、抗鬱剤は飲み始めてから1-2週間ほどで効果が現れ始めますが、少し気分が良くなったからと言って素人判断で抗鬱剤の服用を中止したり量を減らしたりしないで下さい。その段階ではまだ本当に治ったとは云えないからです。鬱病は症状が消えてからも6ヶ月ぐらいは再燃(治りきらないうちに症状が増悪する事)の危険性が高い事が知られています。したがって症状が完全に無くなるような十分な量の薬を6ヶ月程度は継続した後、2-4ヶ月をかけて半減を繰り返した後に中止するのが普通です。早期の自己中止は「離脱症状」と呼ばれる目眩や嘔気などの副作用や、「再発再燃」をきたし易いので、必ず医師の指示のもとに減量中止して下さい。不安障害や鬱病などにかかり易い患者さんの性格傾向として、とにかく「副作用は大丈夫かしら?」という不安が、特にチョット元気になって来た頃から強く出てきますので厳に注意して下さい。

9.自分を責めたり、深刻に考え込んだりしない
 鬱病はれっきとした「心の病」であり精神的な怠慢から来る「気のたるみ」でも「怠け病」でもありません。むしろ生真面目で責任感が強すぎる故にかかったのであり、けっして恥じる必要はないのです。鬱病の患者さんは自責の念が強くなりがちですが、自分を責めたり惨めだと思い込んだり深刻に考え込んだりしない事が大切です。

10.自殺は絶対にしないと約束する
 これは十ヶ条の中でも一番守って頂きたい事です。自殺は家族にも職場の人にも大変な精神的なショックを与え、大きな迷惑をかける事になります。どんなに辛くても自殺だけは絶対にしないと約束して下さい

2016.4.27. 更新:眞弓 久則

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