皆さん「シーボ」って病気、ご存知ですか?英語でSIBOです。
小腸内細菌異常増殖症(Small Intestinal Bacterial Overgrowth:SIBO)とは読んで名のごとく、本来は「低菌数状態」であるべき小腸の中でいろいろな細菌が爆発的に増えてしまい、大量のガスが小腸内に発生してお腹が張り、頑固な下痢や便秘、腹痛、オナラ、お腹のゴロゴロした違和感などに悩まされる病気です。
以前から「過敏性腸症候群」と診断されていた患者さんの大部分はこのSIBOのようです。最近は、小腸カプセル内視鏡などの近代兵器が開発され、小腸の病理がだんだん解明されるようなってハッキリしてきた病気の一つだそうです。欧米では10年ぐらい前から結構有名になってきた病気のようですが日本では医師自身がまだ知らないことが多く、結構見逃されて来ました。もう少し追加すると、これまで「機能性ディスペプシア」、「クローン病」あるいは「セリアック病」、と言われている患者さんもかなりの部分がSIBOと合併しているそうです。
かく言う私自身も2020年1月にテレビで放映された番組でSIBO(小腸内細菌異常増殖症)の名前を初めて知り、「んっ?これって俺のことじゃないか?」と思って江田 証 先生の「江田証 パン・豆類・ヨーグルト・りんごを食べてはいけませんー世界が認めたおなかの弱い人の食べ方・治し方 (2017年 さくら舎)、江田証 小腸を強くすれば病気にならない。今、日本人に忍び寄る「SIBO」から身を守れ!(2018年 インプレス)」と言う本を読み始めたわけです。
SIBOの原因は何か?「高FODMAP食を食べることにある」と言うのですが、これからそのFODMAP食について説明しましょう。またまた英語の略号です。
F: (Fermentable:発酵性):発酵性の以下の4種の糖質を指します
O: (Oligosaccharides:オリゴ糖):ガラクトオリゴ糖とフルクタン
ガラクトオリゴ糖(ガラクトースの重合体):豆類=大豆、レンズ豆、ひよこ豆など
フルクタン(フルクトースの重合体):小麦、タマネギ、ネギ、ニラ、ニンニクなど
D: (Disaccharides:二糖類):乳糖
乳糖(ラクトース):牛乳、ヨーグルト
M: (Monosaccharides:単糖類):フルクトース
フルクトース:果実、はちみつ
A: (And:そして)
P: (Polyols:ポリオールズ):ソルビトール、キシリトール
ソルビトール、キシリトール:ガム、マッシュルーム、カリフラワー
具体的には別紙の一覧表の如く高FODMAP食を避け低FODMAP食(表1)を心掛けてください。これらFODMAPは胃→十二指腸→小腸(空腸)→小腸(回腸)→大腸(盲腸)→上行横行下行結腸、と移動する時、正常な人では空腸回腸でそれなりに消化吸収が進むのに対して、SIBOの患者さんではFODMAPの消化吸収が行われず、回腸付近で不良細菌による異常発酵が進んで「水素ガス」や「メタンガス」を大量に発生します。これらのガスが「ゴロゴロ感」「お腹の張り」「大量のオナラ」「下痢や便秘」「腹痛」の原因となります。
低FODMAP食の実践から1-3週間もすればだんだんお腹の具合が調ってくるのを実感できます。本当は糖質ダイエットに上乗せで低FODMAP食を心掛けると良いのですが、低FODMAP食は覚えるのに結構時間がかかります。江田先生曰く、ダメなものと食べて良いものをペアで覚えてゆくと良いそうです。江田先生のオリジナルの表を若干改変して覚えやすくしたつもりですが‥‥(表1)
本当はSIBOの診断には「ラクツロース呼気試験」を行い、小腸内で異常増殖した細菌が炭水化物を発酵させて発生する「水素ガス」や「メタンガス」を測定するのですが、高価な器械であるため当院では測定できません。まあ、理屈だけご理解ください。
2020.06.11.更新:眞弓 久則
表1.低FODMAP食での禁止食一覧表