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うつ(鬱)はうつ(移)ります:「こころのバリヤー」の張り方
 ダジャレですが、真実です。もう大分前になりますが、ある女優さんが看病疲れで自殺した、という報道がありました。当院でもたくさんのうつ病患者さんを診ていますが、やはり看病疲れで鬱病あるいは鬱状態におちいる人は多いように思います。漢方でも「気鬱」「気虚」と言うことばがあります。「気虚」とは「気」が減っているということです。「気」は水と一緒で高いところから低いところへ流れますどんなに元気な人もうつ病の患者さんと面談の会話や電話などでやり取りするだけでも気を吸い取られます。医療者としての私も患者さんの鬱が移らないように「バリヤー」を張っています。
 鈴木光司のホラー小説「リング」では、呪いのビデオが電話回線やテレビを通じて拡散しそれを見た人が死んで行く、というこわいお話でした。鬱病の場合は鬱の人と話せばタチドコロに移って死んじゃう、なんてことはありませんが、だんだん気分が落ち込んで(抑鬱気分)お出かけや楽しかったはずの趣味などがつまらなくなって(興味喪失)寝付きが悪くなり(不眠症状)美味しく食べれない(食欲不振)、なんて頃にはかなり「移っている」のではないでしょうか?
 家族、友人、知人の愚痴や相談など親身になって聞いてあげるのは大切で重要なことですが、「アレッ、この人ちょっと鬱っぽいぞ」と思ったら病院でキチンと診断を受けて治療を受けるように勧めるのがお互いのためです。私がお勧めする簡単な「バリヤー」の張り方は:あなたの気持ちの上で「もうこれ以上は面倒くさい、やっておれない」と思ったら「どうせこれは他人事だ」と蹴飛ばす覚悟を決めることです。医療者として「どうなの?」と患者さんに非難されるかも知れませんが、私自身も一人の人間として患者さんの鬱が移らないように「バリヤー」を張っています。



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