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アレルギーの漢方治療2:漢方だより(アレルギー系漢方のまとめ)
 花粉症の季節です 毎年春になると鼻がムズムズ、くしゃみ、鼻水、目がかゆい等の症状に悩まされている方はいませんか?風邪のように発熱、咳、のどの痛み等はなく、水の様なサラサラした鼻水が2週間以上にわたって続く様ならそれは立派なアレルギー性鼻炎(花粉症はその代表)です。アレルギー性鼻炎には漢方が有効です。西洋薬に比べて眠気などの副作用が少ないのが特徴です。

小青竜湯(しょうせいりゅう・とう):鼻のムズムズ、くしゃみ、サラサラの鼻水、目のかゆみなどの症状も、小青竜湯の内服後15分もすれば薄れてゆきます。1時間たっても効果がないなら、もう1服追加してみてください。

麻黄附子細辛湯(まおう・ぶし・さいしん・とう):寒気がより強い場合に有効です。

神秘湯(しんぴとう):下記の荊芥連翹湯と並んで咳喘息や気管支喘息に効果の高い方剤です。こじらせた感冒の酷い咳にも有効ですが鼻水には効きません。ステロイドの吸入薬と一緒に使うと効果抜群です。

六味丸(ろくみがん):腎(=腎臓、膀胱、尿路、生殖器、下肢全体)を活発にして水のさばきを良くします。結果的に鼻の粘膜の炎症や浮腫を改善します。

葛根湯加川弓辛夷(かっこんとう・か・せんきゅう・しんい):アレルギー性鼻炎をこじらせると黄色や緑の粘調な鼻汁が出るようになり、鼻づまりや前頭部を中心に頭痛がすることがあります。副鼻腔炎を合併している証拠です。このようなときには葛根湯に排膿作用の川弓(せんきゅう)と消炎作用の辛夷(しんい)を加えた処方が有効です。

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう):蓄膿症、慢性扁桃炎、ニキビなどに有効な薬とされてきましたが、元来「一貫堂」分類の「解毒証体質」=(本来は「結核の毒」を解毒するの意味ですが)現代ではたぶんアレルギー性鼻炎、結膜炎、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、気管支喘息(咳喘息)、アレルギー性下痢症などのアレルギー体質全般+不安障害+鬱病に有効です。17種類の薬草が配合されて、味と臭い的には極めて不味いクスリですが、「良薬は口に苦し」と割り切って長くじっくりと飲めば体質改善になり、むろん花粉症等に対しては30分で効く即効性もあります。また柴胡剤ですので脂肪肝の肝機能障害にも有効性があります。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):この処方は駆於血剤(血の巡りの悪い状態=於血(おけつ)を治すクスリ)の一種ですが、利水作用があり浮腫(水毒=すいどく)を伴った於血に有効です。そもそも花粉症やアレルギー性鼻炎は若い女性に多く見られる傾向が在り、女性で「水毒於血」の典型的な舌証である「胖大」(分厚くて歯痕が付いた大きな水っぽい舌)を呈する方のほぼ9割方はアレルギー性鼻炎持ちです。小青竜湯などでアレルギー性鼻炎を治療する際に、基本的な体質改善薬として当帰芍薬散を用いると、劇的に効果が上がります。

 アレルギー性鼻炎(花粉症)の鼻水とクシャミと気管支喘息のヒューヒューとした呼吸困難は一見別物のようですが、アレルゲン(アレルギーの元)によって引き起こされる気道(空気の通り道)粘膜の炎症によって引き起こされる疾患、という意味においては全く同じ病気と言っても過言ではありません。最近、第三の気道アレルギー形としての「咳喘息」が注目されています。「風邪が何ヶ月も治らない」などと思われて的確な治療(=気管支喘息と全く同じ治療が必要です)がなされていないことがあります。ご注意ください。花粉症+喘息+咳喘息、としばしば合併することがある、ということです。

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