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アレルギーの漢方治療
 これまでは自分自身のアレルギー性鼻炎を含めて、鼻水やクシャミ、咳などを目標に小青竜湯(しょうせいりゅうとう)を一番良く処方して来ました。実際、小青竜湯は鼻水やクシャミ、咳などのアレルギー性鼻炎や咳喘息などの症状に有効な事が多いのですが、残念ながら自分自身が30年間飲んできて体質が改善したという実感がありませんでした。また小青竜湯は温める作用があり、もともと熱証ぎみの私自身が飲みすぎると舌が白くなったりしていました。
 そこで2010年後半からはアレルギー性疾患に対して荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)(小児には柴胡清肝湯=さいこせいかんとう)を中心に処方しました。もともと荊芥連翹湯(や柴胡清肝湯)は一貫堂処方といわれるもので「解毒証体質」の人=「小児期扁桃炎+リンパ腺肥大青年期の蓄膿症+肺結核+神経衰弱症」などの体質改善に有効と云われてきました。私がみるところ、荊芥連翹湯(小児には柴胡清肝湯)はアレルギー全般に有効で、30分以内に有効な即効性と体質改善効果の両方を兼ね備えているようです。陰陽虚実の証にあまり捉われず忍容性が高く、アレルギー性鼻炎、咳喘息、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹、食物アレルギー(吐き気、嘔吐、下痢、腹痛)などすべてのアレルギー疾患によく効くオールマイティーなのです。
 荊芥連翹湯(ツムラ50番など)や柴胡清肝湯(ツムラ80番など)の唯一の欠点は錠剤型がなく(クラシエに荊芥連翹湯のOTCあり)、粉薬はきわめて不味いことです。ただし、4歳の子供でも眠れないほど痒い湿疹や夜中のひどい咳がタチドコロに治れば我慢して飲む(いや飲んでいる)ということです。大雑把に言うと柴胡清肝湯や荊芥連翹湯は処方した患者さんの約1/3には劇的に有効、約1/3はおおむね有効、約1/3にはあまり効かない(と云うより「苦い不味い」と言って飲まない)。ただ重症で、多数のアレルゲンに反応があり、鼻炎+結膜炎+咳喘息+アトピー性皮膚炎+蕁麻疹+食物アレルギーといったように多重の表現系を持った患者さんほど有効率が高いようです。
 一貫堂では荊芥連翹湯や柴胡清肝湯などの解毒証体質に有効な処方の原型として四物黄連解毒湯(一貫堂:地黄+芍薬+川芎+当帰黄芩+黄柏+黄連+山梔子+柴胡+連翹)というのがあり、荊芥連翹湯や柴胡清肝湯でも無効な人には四物黄蓮解毒湯がより強力だと言っています。当院では煎剤はありませんので柴胡清肝湯(または荊芥連翹湯)に黄蓮解毒湯を足して処方しています。またどうしても粉が飲めない人のためには柴胡清肝湯や荊芥連翹湯に近い処方をクラシエの錠剤だけで構成する処方:四物湯6T2×+黄蓮解毒湯6T2×+十味敗毒湯6T2×(朝夕)または各9T3×(毎食前)などを差し上げています。一日18-27錠と飲む錠数が多くなりますが効き目は結構良いようです。
 もちろん耳鼻科や皮膚科で良く処方される抗ヒスタミン剤なども良く効くのですが、荊芥連翹湯と柴胡清肝湯は広く浅く、時には劇的に効くこともあります。いろんな耳鼻科や皮膚科に通ったけど良くならないとお悩みの方は一度ご相談ください。

参照
荊芥連翹湯:地黄+芍薬+川芎+当帰黄芩+黄柏+黄連+山梔子+柴胡(1.5)+連翹+薄荷+桔梗+甘草枳実+白芷+防風+荊芥
柴胡清肝湯:地黄+芍薬+川芎+当帰黄芩+黄柏+黄連+山梔子+柴胡(2.0)+連翹+薄荷+桔梗+甘草+栝楼根+牛蒡子

錠剤のみで四物湯+黄連解毒湯+十味敗毒湯
 四物湯:地黄+芍薬+川芎+当帰クラシエ錠剤6T2×
 黄連解毒湯:黄芩+黄柏+黄連+山梔子クラシエ錠剤6T2×
 十味敗毒湯柴胡+芍薬+川芎桔梗+甘草防風+荊芥+独活+樸樕+生姜クラシエ錠剤6T2×
Total=18T2×

2016.4.21.
改訂:文責 眞弓 久則

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