過敏性腸症候群(IBS)
「腹痛や腹部不快感を伴う下痢や便秘などの便通異常が慢性的に繰り返される疾患」と定義されていますが、要はその名のごとく「神経過敏になりすぎた大腸」ということです。通勤途中の電車でおなかが痛くなってトイレに駆け込む、通勤途中の車の中でおなかが痛くなる、通学途中におなかが痛くなる、試験の前におなかが痛くなり集中できない、大事な会議の前におなかが痛くなる、旅行中に急におなかが痛くなりトイレを探す、などの経験はありませんか(図1と2)?まずは下の図3に従ってセルフチェックをしてみて下さい。
IBSの特徴は図4に描かれている様に緊張やストレスで増強し排便で症状が軽減することです。週末や休日の午前中までは何ともないのにいざ出勤や通学になるとおなかの調子が悪くなる。私がIBSでいつも思い浮かべるのは、もうだいぶん前に映画「しこふんじゃった」で竹中直人が演じた主人公の先輩役のことです。実力は結構あるはずなのに試合前に緊張すると途端におなかが痛くなってトイレに駆け込んでしまう。この様な腹部症状は結果的に患者さんの生活の質を大幅に低下させる事になります(図5)。また、その他の精神症状や自律神経失調症状をしばしば伴います。不眠症、ストレス対応能低下症やうつ病などの項も参照してみて下さい。
一口にIBSと言っても下痢が中心で男性に多い「下痢型」、コロコロのうんちの便秘が中心で女性に多い「便秘型」、下痢になったり便秘になったりを繰り返す「混合型」などに分かれます(図6)。図7に示される様にいいウンチが形成されるには適正な時間で消化物が大腸内を通過して行かなければなりません。早すぎれば下痢になり、遅すぎれば便秘になる訳です(図7)。
IBSの治療は下図のごとくまずは食事療法や運動療法(図8)を行い、それでも症状が撮れない場合は薬物療法などを行います(図9)。最近はセロトニン3受容体拮抗薬などという良い薬も出てきて大分治療しやすくなっています。一度ご相談下さい。
2016.4.24.更新 眞弓久則
▲図1.過敏性腸症候群とは?
▲図2.過敏性腸症候群の例
▲図3.セルフチェック問診表
▲図4.IBSの特徴
▲図5.IBSによる生活の質の低下
▲図6.IBSのタイプ
▲図7.消化物が大腸で便となる仕組み
▲図8.IBSの食事や運動療法
▲図9.IBSの治療法