パニック障害
パニック障害は、突然、何のきっかけもなく動悸(=ドキドキ)、息切れ、呼吸困難、めまい、吐き気などの発作(=パニック発作)が起こり、これが何回も繰り返される病気です(図1−2)。厳密に言うと図3にある13個の「自律神経失調症状」のうちの4個以上が同時にしかも急激に起こって(図3)、救急車などで病院に到着した頃には心電図やレントゲン、頭部CTなどは全く異常がありません。
激しい動悸や息切れなどの症状は誰でも激しい運動をしたり、大勢の人前で演説をしたり、高いビルの上から下を覗く、など何らかの原因がある場合に経験するものです。ところがパニック障害では不思議なことに何の原因もないのにそれらの発作が起きます。そのため患者さんは一層心配になり、「また起きたらどうしよう」という予期不安が起こってきます(図4)。何度かパニック発作を繰り返すと、今度はその発作を起こした同様の場所(たとえば広場や外出それ自体)が怖くなってその場所に行くのを避ける様になります。
パニック障害の原因やメカニズムは完全に解明された訳ではありませんが、図5にあるように「脳内のネットワークの異常」と言えるでしょう。抗鬱剤のSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が有効なことから「脳神経の神経伝達物質セロトニンが不足した状態」とも言えます(図7)。放置すれば増悪と軽快を繰り返しながら、強いストレスを感じるたびごとにだんだん重症化し、鬱病を合併して行きます(図6)。
当院は内科系のクリニックで、認知行動療法などの心理療法やカウンセリングは行いませんが、SSRI(ジェイゾロフトやパキシル、レクサプロなど)やSNRI(Serotonin & Norepinephrine Reuptake Inhibitors:セロトニン•ノルアドレナリン再取り込み阻害薬=サインバルタやトレドミンなど)などを用いた薬物療法を中心に行っています。薬は飲んでいてもやはり軽快と増悪を繰り返しながらゆっくりと回復に向かいますので、焦らずにじっくり通常は6−12ヶ月間は薬物療法を継続しましょう。
別項に書いている通り、当院ではいわゆる精神安定剤=マイナートランキライザーのベンゾジアゼピン系薬剤(デパス、ワイパックス、ソラナックス、セルシンなど)は習癖性が強く病像を複雑化させるため極力使用しません。
2016.4.19.更新 眞弓久則
図1.パニック障害とはどんな病気?
図2.パニック障害の主な症状
図3.パニック障害の詳しい症状
図4.予期不安と広場恐怖
図5.パニック障害の原因
図6.パニック障害の自然経過
図7.パニック障害の治療薬SSRIとは何か?
図8.パニック障害の治療経過
図9.パニック障害治療中の注意